伊藤潤二傑作集 7 首のない彫刻『中古レコード(ちゅうこレコード)』見どころ感想
『中古レコード(ちゅうこレコード)』は、伊藤潤二先生の作品の中でも「音への異常な執着」と「一度聴いたら逃れられない呪い」を描いた、音楽・カルチャーホラーの傑作短編です。
こちらは『伊藤潤二傑作集 7 首のない彫刻』に収録されています。
レコードというアナログな媒体が持つ独特のノイズやレトロな雰囲気が、そのまま恐怖へと昇華された本作の見どころと魅力をまとめました。
📻 『中古レコード』のあらすじ
とある中古レコード店で、音楽マニアの若者たちの間で噂になっている「幻のレコード」がありました。それは、ある無名の歌手が死の直前に吹き込んだとされる、怪しくも美しい歌声が録音された1枚のレコード。
一度その歌声を聴いた者は、誰もがその魔力に取り憑かれ、寝ても覚めてもそのメロディが頭から離れなくなってしまいます。若者たちはそのレコードを我が物にしようと血眼になり、やがて強奪、そして血を見る惨劇へとエスカレートしていくのですが、そのレコードにはさらに悍(おぞま)しい秘密が隠されていました……。
ここが怖い!3つの見どころ
1. 「音楽への依存」が狂気に変わるポップな恐怖
音楽に魅了され、我を忘れてのめり込んでいく若者たちの姿は、一見すると若者カルチャーのようですが、伊藤先生の手にかかると完全な「禁断症状(ジャンキー)」の恐怖へと変貌します。「どうしてももう一度聴きたい」という執念が、人間を狂暴化させていく心理描写がリアルです。
2. レコードという「溝」に刻まれた視覚的ホラー
本作の素晴らしいところは、本来目に見えない「音」や「呪い」を、レコードの盤面(溝)や、それを取り込む人間の肉体を使って、強烈なビジュアルとして描き出している点です。物語の終盤、レコードの「ある正体」が明かされるシーンの作画は、伊藤先生らしい鳥肌もののグロテスクさと美しさが同居しています。
3. ページをめくると脳内に響く「謎の歌声」
作中では、その幻の曲のメロディや歌詞が独特の文字フォントで表現されており、読んでいるだけで「一体どんな恐ろしい、だけど美しい曲なんだろう……」と、読者までもがその謎の音楽の魅力に引きずり込まれそうになる、高い演出力が光ります。
傑作集7巻(首のない彫刻)の中での魅力
第7巻の表題作である『首のない彫刻』が「美術(彫刻)」をモチーフにした芸術ホラーであるのに対し、この『中古レコード』は「音楽」をモチーフにした芸術ホラーと言えます。
どちらも「美しいもの・表現されたもの」が牙を剥き、人間を狂わせていくというテーマが共通しており、アートやカルチャーが好きな人には特にゾクゾクと刺さる、非常にスタイリッシュで恐ろしい一作です。
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